なんと、かの笑福亭鶴瓶さんの主演。
映画「ディア・ドクター」は、
日本の僻地(へきち)医療の実態を人間ドラマとして描いた傑作。
西川美和監督が自ら、僻地の診療所に泊まり込んで、実情を取材。
原作と脚本を手掛けた。
日本の原風景ともいえる棚田が美しく段を重ねる山あい。
自然と人々の暮らしが調和して、のどかな毎日が過ぎてゆく。
ただし現実には、人口の流出や不十分な医療体制、
交通機関の不足など、抱える課題は少なくない。
映画の舞台は、そんな山村。
村の診療所では、たった1人の医師・伊野(笑福亭鶴瓶)が、
懸命に仕事をこなしていた。
新しく赴任してきた研修医の相馬(瑛太)と、
ベテラン看護師の大竹(余貴美子)、
製薬会社の営業マン斎門(香川照之)が地域の医療を支えていた。
住民と伊野は厚い信頼関係にあったが、
ある日突然、伊野が失踪(しっそう)する。
患者に頼まれてある事実を隠し、
のっぴきならない状況になっていたのだ。
西川美和監督は「ゆれる」で、高い評価を得た。
オリジナル脚本をモットーに製作を続けている。
本作では、主演の笑福亭鶴瓶をはじめ、
脇を固める演技派の俳優陣が、
面白くも哀しい人間の暮らしを紡ぎ、好感を残す。