セシル・ゲインズ(フォレスト・ウィテカー)は、
黒人差別が日常だった時代、アメリカ南部で奴隷として生まれた。
親を失い、奴隷からホテルのロビーの見習いとなり、
ついには、アメリカの中枢・ホワイトハウスの執事にスカウトされる。
ケネディ。
ジョンソン。
ニクソン。
フォード。
カーター。
レーガン。
だれもが知る名のアメリカ合衆国大統領7人に仕えた、
だれも知らない黒人執事の波瀾(はらん)に満ちた生涯を描く、
ヒューマン・スペクタクル。
実話に基づいており、
セシル自身も時代の大波に家族とともに巻き込まれながら、
ただただ淡々と、執事としての職をこなす。
次々と直面しながらも、セシルは黙して語らず、白人に仕える。
そして、レーガン政権下では執事としての最高位にも就くが、
セシルの仕事を恥じ、反政府運動に身を委ねる長男。
反対に「国のため」とベトナム戦争に身を投じ、命を落とす次男。
セシルはいわば、″世界の中枢″にいながら、
家族ともども、国と時代に翻弄(ほんろう)されていく。
フォレスト・ウィテカーの感情豊かな演技が魅力。
監督は「プレシャス」のリー・ダニエルズ。
実話が基となっているので、
誰もが知っている実際の事件や歴史的な出来事、
アメリカの歴代大統領の横顔などが描かれる。
ホワイトハウスの中で起こったことが、
世間の目に実際に触れることがあるだろうか。
映画の中の執事・セシルの目を通して、
実際に起きた″さまざまな事情″を追体験することになる。
セシルはなぜ、ホワイトハウスを去り、そして涙したのか。
知られざる真実が映し出される。