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やっぱり海が好き!

詩集「詩ふたつ」。詩人・長田弘と画家グスタフ・クリムトの絆の世界

こんにちは、halukaです。

 

詩「花を持って、会いにゆく」

詩「人生は森のなかの一日」

 

「詩ふたつ」

(発行:クレヨンハウス、2010年6月4日初版)は、

2編の詩から成る詩集です。

 

福島県福島市出身の詩人・長田弘(おさだ・ひろし)と、

オーストリア・ウィーン郊外で生まれた

画家グスタフ・クリムトが織りなす詩情の世界。

 

長田が作した、その詩2編に、

難解な「ことば」はひとつもありません。

 

その詩のために選び抜かれた「ことば」は、

ひたすらに平易であり、

語調は静寂を保ちつつ、

重厚で、温厚でありながら、

人としての情愛を感じさせます。

 

「あなた」と「きみ」。

「じぶん」と「わたし」。

 

長くはない、「ことば」の列が、

一定の歩調を保って、

抽象であるはずの情緒を具象化してみせ、

胸に残ります。

 

長田ならではの読点と句点の置き去りが、

選び抜かれた、その平易な「ことば」に

「重なり」という立体感を持たせ、

読み込むたび、そのたびに、

置き所の異なった情景と心象を、

読み手の胸の内に運んで来てくれる。

 

そんなふうに感じる「詩ふたつ」です。

 

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 この詩集では、その「詩ふたつ」を、

「黄金のクリムト」と呼ばれる、

グスタフ・クリムトが描いた風景画が、

ページをめくるごとに、

長田の詩行を追い、飾ってみせます。

 

この詩集に出合うまで、

華麗な肖像画で知られる画家グスタフ・クリムトが、

「農園」や「野原」や「森」や「果樹園」といった、

素朴な風景画を、

淡々とした細やかで繊細なタッチで、

これほどの数、

遺していたことを知りませんでした。

 

 

空気に湿り気を感じながら、目覚めた朝。

何ともなしに書棚から取り出した1冊の詩集。

 

19世紀末ウィーンを代表する画家。

クリムトの画「Orchard with Roses(バラの咲く果樹園)」

が描かれた詩集ケースに巻かれた帯は、

この詩集を手にした時のまま。

 

その帯には、

クリムトの樹木と花々

長田弘の『絆』の詩篇

と、うたわれています。

 

忘れられない、

けれど、忘れかけていた。

そんな思いを、

時折、ふいに思い出させてくれる。

すてきな詩集です。

 

気に入ったフレーズを口にしながら、

何度かページをめくり終える頃。

気がつくと、

もう、そろそろ、出掛ける時間です。

 

今日のお昼どきは、花でも眺めよう。

 

詩ふたつ

詩ふたつ