こんにちは、halukaです。
「正真正銘のコロッケ」とは、どういったものなのか。
そもそも、そういったものがあるのだろうか。
これまで何百、いや何千個とコロッケを食べてきたと思う。
だが、そういったものに出合ったことはない。
カレーライスと並んで家庭料理の王の座にあるコロッケ。
そのレシピは単純なれど多様なはずだ。
だって。
コロッケは、あまたの家々や精肉店や料理店にあって、
ばあちゃんの味だったり。
かあさんの味だったり。
精肉店や料理店のおじさんの味だったりするんだ。
だから、「これが正真正銘だ」という一品には出合いようがない。
味わう人それぞれが抱くコロッケのイメージは、
味わいというか、食感というか、その根本が異なるのだ。
だが、出合ってしまった。
「イケる コロッケ」なら「ある」と確信してしまった。
コロッケの具は、合い挽(び)きとジャガイモ。
それにタマネギやニンジンと、たいてい相場は決まっている。
特にジャガイモは欠かせないと、漫然とそう思ってた。
茹(ゆ)でて、練ったイモが具のつなぎ役になって、
下ごしらえのときに具を丸めやすいからだ。
ところが、だ。
先日、友達とのれんをくぐった小料理屋さんで出くわした。
コロッケの具にジャガイモが加わっていない。
どういうことだ。
ジャガイモでトロリとしないから、
具はシャキシャキ、ザクザク。
その具を包む衣はこんがりサクサク。
サクサクとザクザクが
ソース(これも自家製らしいのだが)
にまとわりついて、
それはもう、たまんないおいしさ。
こんなパラッパラのザクザク。
どうやって丸めるのだろうかと不思議で、
女将さんに聞いてみた。
「これ、どうやって丸めるんですか?」
「え! ハンドパワーよ!」
一瞬、腰がひけた。
いや、カウンターのいすに腰掛けてるから、腰はひけないのだが、
代わりにあごが出て、口があいた。
「イケる コロッケ」に不可欠な秘技は、
ハンドパワーだったのだ。
ミスターならぬミセス・マリック。
なぞが深まったぜいたくな夜だった。
コロッケなのに、マネができない…。