halukaブログ

やっぱり海が好き!

週末ライフ。「トップスタイリストが語る『くさびの原理』。美容師さんは実は、物理の先生も一目を置く、さすがのプロフェッショナルなのでした」の巻。

こんにちは、halukaです。

 

ひと月ぶりに、いつもお世話になっている美容室へ。

担当していただいている、その美容室のトップスタイリストさんは、

髪を前回の金色から、黒に寒色の薄い青色を添えた、

春向きのなんだかスタイリッシュな姿に変じていました。

 

お話はここで、いったん、少し横道にそれます。

皆さま、物理学が得意な方はおいででしょうか。

私は、苦手です。

そんな私でも知っているのが、

小学校で習う「力点」「支点」「作用点」が働く「てこの原理」。

 

髪をカットしていただきながら、

お話が、いきなり物理学に及んだのは、

別にたわいもない、

「人は、水の上を走って渡れるだろうか」という、

何でもない話題がきっかけでした。

 

足先の細かい毛を利用するアメンボはまだしも、

“水面を走る忍者トカゲ” として知られるご存じ、バジリスクトカゲ。

その体調は70センチほどで、体重は約200グラム。

後ろ足で水面を叩くように高速で回しながら、

沈むことなく、猛スピードで対岸まで見事に走り渡ります。

水上を走っている時は、

長い指の間の皮膚が広がって、

水面と足裏との間にエアポケットをつくり、

そのエアポケットの働きもあって、

体が水中に沈む前に、次の一歩を素早く前に踏み出すという “走法” で、

時速7キロほどの速さで、

幅4メートル以上の水面を走りながら渡り切ります。

 

その走りは、水の表面張力を利用したもので、

バジリスクトカゲのそれを人間に例えてみますと、

成人男性の平均的な身長・体重での換算なら、結果、

「時速104キロで走ることが出来たなら、

人間も水面を走って渡れる」。

「けれど、それは、

陸上競技の100メートル世界記録、9秒58の2.8倍もの速さなので、

常人には、到底ムリ(笑)」だとか、

「てこの原理を利用して、手漕ぎボートを誰よりも速く漕ぐには、

どんなオールが一番いいか?」などといった、

土曜日の昼下がりにふさわしいような、ふさわしくも何ともないような、

つまり、どうでもいいような話題で盛り上がっていましたら、

そのスタイリストさんが突然、

「ねえhaluka、

美容師の国家試験に出る『くさびの原理』って知ってる?」

と、真顔で問い掛けてきたのです。

 

週末ライフ。「言われたことだけやるんじゃなくて、これから望まれそうなことを予測して動く」はトップスタイリストさんの核心。 - halukaブログ

 

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 【写真AC】

 

物理を苦手とする私が、そんなの知るわけがございません。

「それ、なに?」と問い返しますと、

「ハサミ。ハサミはね、『くさびの原理』で、髪を切るの」と、

ふだんは見せない、真剣なまなざしで、ヘアカットを続けています。

 

聞くと、美容師を目指すための学校では、

物理はもちろん、化学や薬学、衛生管理など、

ほぼ、ほぼ理系の座学もきちんとあるのだそうで、

美容師になるための国家試験は、ペーパーと実技。

そのトップスタイリストさん曰く、

「美容師仲間では、あるある、なんですけれど、

私、ペーパーテスト、100点だったの。うふふ」という具合です。

 

参りました。

その瞬間以降、

「ハサミと包丁の切り方(切れ方)の原理の違い」、

「てこの原理」、

「数百円というお値段のハサミと、

数十万円というお値段のプロのスタイリストが使うハサミは、

どこがどう、なぜ、なんのために、違うのか」など、

「目からうろこ」の “おもしろ物理学” のオンパレード。

 

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   【写真AC】

 

さすがです。プロフェッショナルです。

そう、思いました。

ただ、慣れ親しんだハサミで、髪を切っているのではありませんでした。

その “原理” を知って、つまり、「なぜ、ハサミで髪が切れるのか」を知って、

だから、

「どれほどの断面、どれほどの鋭利さを持ったハサミが、

自分が目指すスタイリング、顧客がリクエストするスタイリングには必要で」、

「それを、どう使えば、そうした要望に沿った、

百人百色のヘアカットが実現するのか」をスタイリストさんが知って、

その上で、体現していだだけているからこそ、

美容室を後にした際の気持ちよさ、心地よさが我が身に残るのか、

それが分かって、なんだか得をした気分になった、

真冬の日射しに包まれた土曜日の午後だったのでした。