halukaブログ

やっぱり海が好き!

進め!俳句ビギナー㉘。「春の頃、北の窓を開いて誘ったそよ風は梅雨を越えると南の風に変わってみせる四季の風」の巻。

こんにちは、halukaです。

 

「北窓(きたまど)を開く」と聞いたなら、

どのような情景が思い浮かびますか。

 

「北窓開く」は、俳句に詠われる春の季語です。

 

季語集 「虚子編 季寄せ 改訂版」(三省堂)では、

3月の季語として、紹介されています。

 

その様子は、

冷たい北風が吹き続く寒い冬の間は、

じっと閉じ切っていた北向きの窓を

春がきたなら、開け放って、

暖かな風と日光を誘い込む…

というような具合でしょうか。

 

寒さに凍え、それに耐えた冬を越え、

ようやくやってきた春は、雪や霜を解かして、

水は温み、

吹く風もほのかな暖かさをまといます。

 

その風を誘い入れようとする、

移り変わりの季節の仕草を

「北窓開く」と口にする心持ちは、

洒落た映画のセリフのようでもあって、

季語の放つ鋭敏さを感じます。

 

その時々の当たり前で自然な仕草を見逃さず、

ひと言で、一気に場面の転換を連想させてみせる。

「言葉」は時に、

そんな瞬発力さえ持つようにも思います。

 

月めくりのカレンダーは、

「春雨(はるさめ)」の頃の3月から、

「惜春(せきしゅん)」の4月、

「薄暑(はくしょ)」の5月とページが過ぎて、

もう6月も半ばに差し掛かろうという時分になりました。

 

梅雨前線が徐々に北上する、

入梅(にゅうばい)」の頃を迎えています。

文字通り、「梅雨入り」ですね。

 

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昼下がりの偶然の晴れ間に

水鳥が一羽。

 

透き通った川面に白い影を映しながら、

上流から下流へ向けて、

ひとつ、ふたつ、羽ばたいて、

ふわりと飛んで見せました。

 

その仕草は、

夏を迎えようとする風向きさえも知っていそうで、

水鳥が一羽、ふわりと飛んだだけなのに、

爽快感さえ漂います。

 

懐かしさや人恋しさや期待感…

季節の移り目に自然が織りなす情景には、

人が持つさまざまな想いも重なって、

その季節ならではの一場面を切り取る季語が

聞く人の胸に届き、

趣きを増すのかもしれません。

 

しばらくの梅雨の間。

草木は潤い、風は湿り気を帯びます。

大地は濡れて、

街歩きに傘が手放せなくなったり、

激しく降る雨に窓を開ける機会も減ります。

 

けれども、そのうち、その梅雨が去り、

まぶしい太陽光が頭上から

遠慮なしに降り注ぐ夏の季節が近づくと、

北窓を開けさせた春のそよ風は、

南の風に吹き変わり、

さらりと街路を吹き向けて、

川面を揺らし、

海辺をそよぎもするのでしょう。

 

そうなったなら、

梅雨の間は閉じた窓を大きく開いて、

吹く風を部屋いっぱいに迎えてもよさそうです。

 

梅雨空から、しとしとと降る雨粒が、

路面をばっと叩く夕立に変わる頃、

今年も夏を迎えます。

 

七色の虹が空を彩るのもその頃かもしれません。