halukaブログ

やっぱり海が好き!

新古今将棋道②。「親心と恋心と勝負勘のどれが一番大切かと問われても今はまだ答えに窮するばかりなり」の巻。

こんにちは、halukaです

 

その時、

先生の手持ちの駒、

すなわち、今宵の一局で、

先生が私から奪い取っていた駒は、

歩兵(ふひょう)がたしか、4枚、

桂馬(けいま)が1枚、

銀将(ぎんしょう)が1枚、

金将(きんしょう)が1枚、

飛車(ひしゃ)が1枚。

 

 

私から見て、私の布陣の左半分は総崩れ。

私の王将(おうしょう)は、すでに逃避行に入っていまして、

頭に描いた逃げ道は、二筋。

 

先生が、手持ちの駒のなかから、

もしも金将を選んで、

私の王将の前にパチリと指し込んでいましたら、

私の王将は、その時点で詰んでいました。

 

先生は、5分ほど、ご自分の手持ちの駒と、

盤上の行(ぎょう)、そして、

将棋盤から視線を離すことなく後頭部をさすっている、

私の額の辺りを、

かわるがわる、にこにこと、眺めておいでの様子が、

間接視野で、見て取れました。

 

5分ほど後、

逃避行中の私の王将の鼻っ面にパチリと指し打たれたのは、

銀将

銀将の真横に逃げる道が出来ました。

 

3秒ほど後。

「親心、ですか。先生?」と、

師におうかがいを立ててはみましたが、

前回の不敵な笑い「ふふふっ」は、鳴りを潜め、

なんと、素知らぬ顔。

むしろ、

「あれれれれ、指し損ねたかしらん」なんて、

澄ましたお顔をされています。

 

新古今将棋道①。「行に駒が絡んで飛んで描く我が道の行く末は金成り」の巻。 - halukaブログ

 

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私なりに即座に読み取りました。

 

「ほいよ、ほんの刹那、隙を見せてあげるから、

halukaさん、あなたのその窮状、

なんとか立て直してごらんなさい」。

師からの、そんなメッセージです。

 

「向かっ腹が立つ」、あるいは、「腹を決める」とは、

あの瞬間のことでしょう。

「そういうことでしたら、とにかく、生き延びてご覧に入れます」。

私は、そう決めました。

 

自分の手持ちの駒、すなわち、

先生の布陣を荒らして、奪い取った希少な駒。

自分の布陣の現況。

それに、自分の頭の中にある、定跡を重ねながら、

王将の側に、常に誰かを付き添わせての逃避行です。

 

本気でした。

「必ず、何かが起こる」。「何かを起こす」。そう念じて、

先生に気取られないよう、

惚れた異性のお話しを唐突に耳打ちなどし、

一手一手、指し進めていましたら、

来ました。大チャンス!

先生の玉将に向かう行が、一瞬、空きました。

 

「先生、王手、飛車取りです」。

私は、抑えた声をさらに絞り、

自分の頬から、こぼれ落ちそうになる笑みを必死に噛み殺し、

師の次の一手を待ちました。

 

「まあ、仕方がないか」。

先生は、小さく、そうつぶやいて、

玉将への道を塞ぎにかかりました。

 

皆さま、もう、お察しの通りでございます。

先生から、「飛車のただ取り!」。

盤上の形勢は、完全に不利ですが、

私の手元に戻った飛車は、こうごうしく輝いて見え、

私はまるで、勝者の気分を味わうことができました。

(ま、すぐに盤上の飛車を取り返されちゃったんですけどね…)

それに、「君、なかなか粘るね」と、お褒めの言葉付きです。 

 

私の王将は、けれどもやがて、逃げ道を失い、

先手決めのジャンケンポンから1時間後、

「先生、申し上げます。投了です」と、

私は、すがすがしく、お辞儀をしました。

 

見上げると、あの不敵な笑い、

「ふふふっ」が甦っているではありませんか。

皆さま、どうかお察しください。

私のこの心情。

「嗚呼、悔しいさとは、こんなふうにあるものなのですね…」。

 

今日だけは、キメのひと言を添えさせていただきます。

 I`ll be back. (出来れば、シュワルツェネッガー氏スタイルで)

(たとえ、もう来るななんて言われても、そんなの知ったことですか。

 絶対にまた、行きますからね)。(>_<)

 

あ、それと、先生。

おすそ分けしていただいた、

ほおばる果実の贅沢みかんジュース。

おいしゅうございました。

ごちそうさまでした。

取り急ぎ、お礼まで。(^_-)-☆