親子でドーン!
運動会ではない。
親子丼である。
鶏肉と細く切ったタマネギを薄口しょうゆとみりんのだしで煮込む。
底浅のフライパンに適量を盛って、
その具とだしにさささっと熱をもたせる。
軽く湯立ったら、
そこに新鮮な卵を溶いて、落として、さささっと煮詰める。
丼に炊き立ての白ご飯を少な目によそって、
その熱々の卵とろとろが絡まった鶏肉をふわっとのっける。
好みで、シソかナンテンの葉を中央にあしらえば、
たちまち、親子丼の出来上がりである。
小さなお椀(わん)に、
ちょこんとお蕎麦(そば)がついてくるところがみそである。
ランチの定番。
短絡という言い方は失礼だ。
考えてみると、「なんという発想力だ!」と驚く。
その味わいは、全国津々浦々で、
あるいはそれを出す店々で少しずつ違い、
それぞれに固定客がいるはずだ。
確信をもった確固たるリピーターである。
そして、それはなぜか、
「うどん屋」さんにはなく、「そば屋さん」にあるのだ。
その不思議については今後、
さらに研究を重ねていきたいのだが、
今回は、さらなる謎に迫っておきたい。
「カレー南そば」の「南」とは、なんとネギのことだった。
きょうはちょっと贅沢(ぜいたく)をしようと、
お昼に「カレー南そば」をお願いした。
余談だが、「カレー南」もなぜか「うどん屋さん」にはなく、
「そば屋さん」にある。
で、注文しようとしたら、やってきた給士さんが、
「お肉は鶏(とり)にしますか、豚にしますか」とお尋ねになる。
「えっ!?」と驚いて、
「豚肉もあるんですか?」と尋ね返してしまった。
給士さんは当然のように「はい」と。
それどころか、かえって、
「なんなの?」という顔でこちらを見ている。
不思議そうである。
で、とっさに聞いてみた。
「カレー南って、鶏のことなんじゃないんですか?」。
すると、「南はネギのことですよ」と事も無げな給士さん。
「えっ?」。
「南は、『南蛮』の意味で、ネギのことです」と給士さんは自信ありげだ。
だから、鴨(鶏)ではなく、肉は豚でもいいのだと。
言ってみれば、「カレー豚南そば」である。
確かに「カレー鴨南そばを」とは注文しなかった。
「カレー南そば」とは「カレー鴨南そば」のことだと、
勝手に思い込んでいた。
つぶやいてみた。
「カレー豚南そば」…
もうたまらない。どんどん食欲が湧いてくる。
「じゃ、お肉が豚のカレー南そばをお願いします」。
数分後、テーブルに載ったのは、
間違いなく「カレー豚南そば」だった。
「ポークカレー ネギそば」ということか。
豚肉の脂が甘くて、辛いカレーとからまって。
家でも作ってみたくなるおいしさ。
あっという間に平らげた。
カレー南そば、恐るべし。奥深し。
どうしてこんなに、世間さまのことを知らないんだろう。
「モウ」…(^_-)-☆