大平洋戦争(第2次世界大戦)から73年。
その体験を直接語れる世代の方々は次第に少なくなりつつある。
劇場アニメ「この世界の片隅に」が描くのは、
その戦争の足音が日本に近づいていた頃の広島県。
広島市から縁あって、呉市に嫁いできた18歳の主人公・北条すず。
日本を取り巻く戦局は日に日に厳しくなり、
市民は決して豊かな生活ではなかったが、
市井(しせい)の人々には笑顔があった。
嫁いだすずも、生来ののんびりした性格も手伝って、
嫁ぎ先の家族や町の人々と穏やかに暮らしていた。
しかし、軍港のある呉市への空襲は激化していく。
人々はそれでも、日々のささやかな出来事に寄り添い、
互いに心を寄せ合いながら、日常を送っていた。
そんな世情の最中、広島に原爆が落ちた…
漫画家・こうの史代(ふみよ)さんの同名のコミックをアニメ化。
作品は、製作費の一部を市民から募るクラウド・ファンディングで作られた。
公開後、ツイッターや口コミで高い評価が広まり、
上映する劇場も増えた。
女優の能年玲奈(のうねん れな)さんが、
「のん」と改名して初めての声優を務めている。
監督は「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直さん。
…昭和18年。
戦時下、
人々は物資が足りないなりに毎日、互いに声を掛け合い、
生活を工夫しながら過ごしていた。
戦争へ、戦争へと突き進んでいく時代だったが、
人々には笑顔と愛情があった。
そんな生活の中、すずはある日、不発弾によって、
毎日のように一緒に遊んでいた身内の子とともに、すず自身の大切なものを失う。
すずは怒り、嘆き、悲しむ。
そのすずが、原爆投下後の広島市で目にした光景…
そして、そこで、出会い、見つけたもの…
すずは、少し違った自分になり、いつもの日常への道をたどる。
丁寧に描かれた人物や時代背景。
淡々と描かれる戦時下の日常。
生きる希望は見つかるんだ。
たとえ、何を失ったとしても。
そう語り掛けてくれるような一作。
この世界の片隅に コミック 全3巻完結セット (アクションコミックス)
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