こんにちは、halukaです。
「一瞬の晴れ間」というものは、
あるにはあるもののようです。
潮風を求めて、海岸通りを歩いていたら、
それまで、空を厚く覆っていた雲が、
一瞬、風に吹かれて陣形を崩し、
天上から真っすぐに射す太陽光を塞ぎきれずに、
光を地上にこぼしてきました。
日中、陽だまりに出ると、
汗ばむくらいの時季になりました。
朝陽がはっきりとは姿を見せない、
曙(あけぼの)の頃には、まだ肌寒さはありますが、
午前も半ばを過ぎる時刻になりますと、
陽気がすっかり目を覚まし、
薄暑と呼ばれる、初夏の訪れを教えもします。
海沿いを歩いた、
そんな夏めく昼下がり。
「海を吹き渡る風」を何と名付けようかしら…。
というような、のんきなことを考えながら、
潮騒の途切れない、
人影が、ちらほらとする海岸通りを昼ひなか、
独り歩く海側の磯の辺りには、
渚を染める白波が、遠慮がちに打ち寄せて、
小さく弾けて、泡となって姿を消しては、
また、寄せます。
本格的な梅雨の季節を迎えるまでの、
ほんのりと暖かなこの頃の時季の暑さは、
海岸沿いを歩いてみたり、
磯の香りにたたずんでみたり、
マリンスポーツを楽しむまでには及ばなくても、
休日に許されたひとときを過ごすには、
快適な頃になりました。
ウネリが上がれば、
サーフボードを持ち出すシーズンです。
ショートボード、ロングボード、
ファンボード、ウインドサーフィンも、
きっと姿を見せるでしょう。
磯の辺りを眺めながら、
岸辺近くの白波が尾を引くように見えるのは、
その磯が遠浅で、
海底の地形で踊った小さなウネリが、
静かに持ち上がっている証しです。
まぶたで切り取る、そのワンシーンは、
海辺を飾る開放感たっぷりの潤いとなって、
岸に寄せる「潮騒」という名の調べを
海岸通りに届けてくれます。
風薫る海辺を歩くには、
梅雨前の今がベストシーズン。
歩道から、波打ち際へ、
コンクリートで整えられた階段を、
2段、3段、下ってみると、
防波堤で遮られていた一陣の風が脇を吹き抜け、
Tシャツの裾をめくってみせて、
さらりと素肌を触って去ります。
どなたにも記憶があるかもしれません。
片手ですくった海辺の砂が、
手のひらからサラサラと、
指の間をこぼれて落ちる、
乾いた感触。
もう少し、陽射しが強まれば、
その、海砂の乾いた感触が、
手のひらにまた、戻ってきます。
「海を吹き渡る風」に付ける名前など、
ついぞ思いもつかないままに、
散歩の後のスケジュールが空っぽの
ゆるやかな気分を味わった憩いの時。
雲間を突いて、
海岸通りに一瞬、舞い降りたまぶしさは、
潮の香りを引き連れて、
初夏の訪れを告げていました。