こんにちは、halukaです。
私が師と仰ぐ先生との将棋対局は、
私の勝手な都合でお流れとなった先週を置いて、
2週間ぶりの対戦となりました。
当日は、春の嵐を予感させる強く冷たい風が吹き荒れ、
文字通り、「開戦前夜」を思わせる緊張感あふれる天候。
その寒さを避けるべく、と申しますか、いつも通り、
愛車で先生の居宅におじゃまをしますと、
なんと、バレンタインデーのおこぼれ。
師の奥様であるご夫人手づくりのイチゴが載った甘いショートケーキが、
白いテーブルの上で私どもの着座を待ち構えておりまして、
「腹が減っては戦は出来ぬ」とばかりに、
先生と私は、
このところの出来事などについて意見し合いながら、
甘い芳香を部屋中に漂わせる、
丸みを帯びたクリーム色のその立方体にかぶりついたのでした。
勝負は、開始早々から、当日の天候よろしく、荒れ模様…。
さて、ご夫人がご用意なさったショートケーキは、ちょうど三つ。
先生がひとつ、私がひとつ。ご夫人がひとつ…というわけです。
なぜ、まるで幼い子供にでも言い聞かせるかのように、
そんな、分かり切ったことを行数を割いてまで書き残しているかと、
そう申しますと、ほんのひと月ほど前の新年早々、
師と私は、なんと、
ご夫人の取り分だったバームクーヘンを、
そうと知りながら、将棋の対局中にぺろりと平げてしまうという、
前代未聞の大失態を演じていたからです。
新古今将棋道⑭。2020新春対局の勝利の鍵を握っていたのは甘い焼き菓子。歴史的大波乱『バームクーヘンの戦い』を制したのは果たして誰…」の巻。 - halukaブログ
その日の戦いは、結局「引き分け」とせざるを得ず、
その教訓から、その後、甘い焼き菓子のなかでも、ケーキの類は、
あらかじめ、3人分がカットしてある…ということになったようです。
(詳しいいきさつは、よく分かりません)。
まあ、とにかく、
その美味しい、甘いショートケーキで戦意を満たした師と私は、
負けが込んでいる私の先手で開局しました。
ところが、私ども三人の世間話は、
甘いショートケーキで心が和んだのか、
青春時代の恋にまつわる照れ話から、
このところのバレンタインデーのホットなお話まで、
恋愛論議一色となり、
小一時間、ああでもない、こうでもない、
いや、それは、そのことはもう忘れたなと、
虚々実々のずっこけ話の連発になってしまい、
気がつくと、将棋対決に残された時間、
つまり、予定していた夕食会までの猶予は30分ほど。
師と私は、大急ぎで駒を指し合う羽目に陥りました。
そうなると、俄然、棋力を発揮するのが師。
とにかく、攻めに攻めてきます。
新古今将棋道⑮。「攻めて攻めて攻めて攻め抜く。それが勝利の方程式。諦めたら、そこで試合終了ですよ」の巻。 - halukaブログ
上田初美女流三段・タイトル保持者監修、
「女性のための将棋の教科書~誰でも簡単に始められる入門編」
『この知的な楽しさ、男性だけに独占させない』
(つちや書店)によれば、
“玉将の格言” として、「王の早逃げ八手の得」と紹介があります。
つまり、玉将(ぎょくしょう)は、最も大切に守るべき駒であり、
積極的に自分から敵陣に攻めに行ったり、
攻めに来た敵の駒を自分から取ることは、お勧めではなく、
そうではなくて、
玉将の使命は、ただひたすら逃げることと、そうあります。
早い話が、
「敵に攻撃される前に、玉将を安全な場所に避難させておくことは、
終盤で八手分の価値がある」とされるらしいのです。
その項を読んでいて、それを知っていた私が今回取った手は、
まさしく、そうでした。
自らの玉将を守りに守ったのですが、
師がお取りになった攻撃手法は、
そんな私の守りなど、一掃し、
一撃で砕いてしまう、非情な手筋でした。
その戦術とは、なんと、
私から奪い取った香車(きょうしゃ)を縦に2枚に重ね、
その背後に飛車(ひしゃ)が構えるという、
大駒「飛車」という巨砲の前に連弾必殺の速射砲が縦列に並ぶ、
なんとも不気味な構え。
もう、ご説明さえ、いりはしないようですね。
その通りでございます。
二の矢「次の香車」が、
万全だったはずの私の守りを支えていた、
最後は、巨砲「飛車」が遠目から筋を利かせる中、
私の戦績は、2勝7敗2引き分けと、
またもや負け数先行です。
なにか、いいお知恵はありませんかねえ。
師の気をどこそこに、
どこへでもいいから、
勝負どきの将棋盤から、どこかに目をそらしていただけるような、
そんないい戦術はないものですかね。(>_<)